理想と現実

長年この仕事をしてきましたので学校教育のトレンドは追って来たつもりです。

そんな中で現在、強く感じていることを書きます。

それは何かと言いますと、ズバリ!「アクティブ・ラーニングって有効なの?特に小学校で!」という話です。

まずアクティブ・ラーニングとは何かですが、簡単に言えば一方的な講義形式ではなく、学習者が主体的に考え、話し合い、体験することで深い学びを得る教育手法です。

先生が言ってることを一方的に聞くだけではなく、子どもたちが自ら考えて主体的に学んで欲しい!そんな思いが強く感じられます。

とてもいいことだと一見すると感じられるかもしれません。

うまくいけば最高ですよね。

ただ、実際はどうなのでしょう?

私のような塾の立場から感じることは一言で「基礎学力を伝える時間は足りているのだろうか?」です。

確かにアクティブ・ラーニングは素晴らしい考え方だと思うのです。

思うのですが一方、話し合いなどに使われる時間によって基礎学力を仕込む時間が無くなっていたとしたらどうなっちゃうのでしょうか?

分かり易い結果としてまず思い浮かぶのが「日本の学力低下」というものです。

2024年度の文部科学省の調査で、特に小・中学生の5教科すべての平均スコアが2021年度よりも低下したことで顕著に学力の低下は示されました。

とのことです。

様々な要因はあるとは思いますが、私はこのアクティブ・ラーニング周辺のことが大きく原因していると思っています。

アクティブ・ラーニングと高い学力の維持を両立させることは相当難しいと感じます。

理由は明確で時間が足りていないからです。

ゆとり教育から脱却した時点で学校の授業時間は足りていません。

足らすためには週休一日制にするか、一日の授業数を増やす以外に方法はないと思います。

にもかかわらず時間はゆとり教育の時と大して変わらずにアクティブ・ラーニングと言うことは基礎学力のための時間は必然的に足らないはずです。

ひょっとしたら「ゆとり教育」が「アクティブ・ラーニング」に変わっただけなんじゃ?と思われる方もおられるでしょう。

これは半分当たっているかもしれないのですが、実はそうでもない部分もあるのです。

どういうことか?

ズバリ!教科書の内容があの時と全然違うのです。

ゆとり教育期の教科書はとにかく文字数が少なかったのに対して今はこれでもかというくらいの情報量。

何ならQRコードもついているのでスマホを使っていくらでも学べるのです。

これって何が読み取れるのでしょうか?

例えるならば今の教科書は「分厚い取扱説明書」なのです。

分厚い取説をほとんどの人は読まないのではないでしょうか?

当然、読めば全て書かれているのです。

ここから読み取れる文部科学省からのメッセージは何か?

恐らく「情報は与えているので、あとはご自分で勝手にやりましょう。自己責任です。以上。」という感じです。

出来る人はどんどんやって下さい。

やらない人は知りません。

そんな感じです。

まぁまぁ冷たいですよね。

そう、冷たいのです。

私はここ数年の教科書改訂を見てきた中で強く感じるのは「冷たさ」です。

昭和世代ならお馴染みだった「金八先生」の真逆の世界になっているのかもしれません。

今、金八先生が学校にいたら何て言うんでしょうか?

たまに妄想しています。