ジレンマ

いわゆる進学校と呼ばれるところは授業進度が速いことが当たり前のことになっています。

それを前提として受験してくる生徒たちにとってはむしろ望むところであり一つの魅力とも言えましょう。

高校2年生が終わる頃には高校3年間でやるべきことは一通り終わっており云々と言う具合です。

そのようにカリキュラムを組むことで結果として有名大学に合格する人が多く輩出される可能性が高まります。

昔からその辺の仕組みは変わっていません。

私が通っていた川越高校もそんな感じでした。

この辺の事情に関しては特に問題は無いものと思われます。

受験生の希望に沿っている訳ですから。

ただ、それに似たことを公立の中学校でやってしまうことには些かの違和感を覚えずにはいられません。

某中学校の数学の授業進度が普通の学校のそれに比して相当速かったのでした。

公立の学校の場合、様々な学習状況の生徒がいます。

とても良く理解している生徒、まずまずの理解度の生徒、若干の遅れがある生徒、非常に遅れが出てしまっている生徒。

特に遅れてしまっている生徒にとって速過ぎる授業進度はキツいことは想像に難くありません。

塾に通っていなければ全く分からないんですよぉ~と、とある生徒は私に言いました。

正直言ってとても複雑な思いを抱きました。

塾を運営している者にとってそれは素直に喜ぶべきことではないと私は思います。

何故なら私は常々、塾よりも学校の授業が大切なのですと言っているものですから。

そういった私の言説を根底から揺るがす事態がこの異常に速い授業進度の周りには巻き起こっているのでした。

生徒たちが塾に通っていることを前提に学校の授業が行われているなんておかしな話だと私は思います。

と、ここまで書いたところで自分の言っていることもまずまず矛盾していることに思い至りました。

そもそも塾と言う存在自体、遅れる生徒がいることを前提で成り立っているフシは否定できないのです。

そのように考えるとガンガン飛ばすその先生のやり方を塾運営者の私がとやかく言うこと自体が間違っているのかもしれません。

まさにジレンマです。

少なくとも言えそうなことは極端は良くないよなということでしょう。

遅れてしまっている生徒を完全に見捨てるようなやり方はやはりやりすぎなのでは?と思うのでした。

どうにも歯切れは悪くならざるを得ませんが…